大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)479号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判旨〕所論は被告人平尾は本件偽造の自動車運転免許証の交付を受ける前に峰岸と会つた事はなく、それより約八月を経過した昭和三十年八月二十五、六日頃初めて峰岸と話をしたにすぎない、そして峰岸との話から免許証は偽造ではないかとの疑を持つたもので、それまではそれが偽造であるとは夢想だにしなかつたのであるから、原審判決が被告人平尾につき相被告人峰岸同木村らとの共謀といい、かつ公文書偽造の犯意ありとしたのは事実を誤認したと主張するのである。

しかし斉しく共謀といつても、共謀関係にある数名が一時に相会し、通謀するとは限らず、甲から乙、乙から丙という風に順次犯罪の通謀が存することもあり、これも又共謀の一形態に外ならないのである。これを本件についてみると、原判決引用の証拠によれば、被告人平尾は自動二輪免許を受けたものであるが、更に普通自動車運転者試験を経ずに不正に同免許証を入手しようと企て、原審相被告人木村清一にこれを依頼し、木村は更に被告人峰岸に依頼し、被告人峰岸はこの依頼に応じ、被告人平尾に対し交付されていた自動車運転免許証の免許種類及び免許年月日の欄にゴム印を以て「普通自動車免許」及び「29・8・26」とそれぞれ記入し、公安委員会欄には、東京都公安委員会之印に酷似する「東京都合交委員会之印」と印刻した朱印を冒捺し、もつて東京都公安委員会作成名義の普通自動車免許証一通(昭和三三年押第一四八号の三三)を偽造した事実を認め得るのであるから、被告人平尾が右偽造の普通自動車免許証を入手する以前に於ては、被告人峰岸と直接会合した事実のないことは所論のとおりであつても、被告人平尾、同峰岸両名の間に、木村清一を仲介とし、順次犯罪事実の通謀があつたものと認めることを妨げるものではなく、原審がこれを前記免許証偽造の共謀と判示したのはまことに相当であるといわなければならない。

(二)ところで文書偽造罪の成立に必要な犯意とは、作成権限のない者が他人名義の文書図画を作成することの認識あることをいうもので、必ずしもその作成された文書図画が法律上偽造のものであることまで認識していたことを要するものでないのはもとより、具体的に何人がいかなる方法によりこれを作成するかについて認識する必要もないわけである。原判決挙示の証拠に従えば、被告人平尾が木村清一に前記の如き依頼をしたが、同被告人は自動二輪免許を受けた経験があることではあるし、当然普通自動車免許にもその試験が必要であつて、その試験に合格しない者に対し東京都公安委員会名義をもつて正規の免許証が交付されるわけがないことを熟知しているのであるから、今木村に対しその入手を依頼するのも、正規の免許証が交付されるであろうことを予想し、かつかかる書類の作成を木村に依頼した趣旨であると認められ、同被告人がこのような認識の下に行動したものであれば、文書偽造罪の犯意があるとするに十分である。従つて被告人平尾が峰岸に於て「東京都合交委員会之印」という偽造印を使用して該免許証を作成するものであることを知らず、鮫洲の係員などが正規の印章を使用して作成するものとして自己の作成入手した免許証は峰岸の話を聞くまで偽造ではないと誤信していたとするも、これをもつて被告人には文書偽造罪の犯意がないとはいえないのである。(鮫洲の係員とはいかなる権限を有する人物を指すか記録上明らかとはいえないが、仮にそれが公安委員会の命を受け自動車運転免許証を作成する事務に従事する公務員であるとしても、同係員には自動車運転者試験を受けさえしない者に対し、運転免許証を発行する権限を有するものではなく、東京都公安委員会名義をもつて運転者の試験に合格してない被告人平尾に対し擅に普通自動車免許証を作成することは、即ち作成権限のない者が他人名義の文書を作成したと同一であり、被告人平尾が自己の免許証を偽造ではないと誤信していたにしても、かかる誤信が文書偽造罪の犯意を阻却するものとはいえない。)

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